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ドル建て・円建て換算法
金は、経済不安や地政学リスクの影響を受ける国際的な商品として、世界中で取引されています。
その価格は主に、現物市場であるロコ・ロンドン取引と、先物市場であるNY金が基準となります。
金価格を理解するためには、国内と海外で異なる表示単位や価格の背景を知る必要があります。
本記事では、国内外の金価格をどのように換算できるのかを解説します。
1. 金価格の決定要因
1-1.市場の基準
NY金は世界の金先物の指標であり、CMEグループ傘下の「ニューヨーク商品取引所(COMEX)」で取引されています。現物市場はロコ・ロンドン市場が中心的な位置を占めます。「ロコ」とは「置き場」あるいは「~~渡し」という意味で、「ロコ・ロンドン(ロンドン渡し価格)」とは、金現物の受渡場所をロンドンにすることを条件とした取引価格です。受渡場所を東京に指定した場合はロコ・東京(東京渡し価格)、同様にロコ・ニューヨーク(ニューヨーク渡し価格)などがあります。
1-2.価格表示の違い
海外ではトロイオンス単位で価格が表示されることが一般的ですが、日本ではグラム単位が主流です。このため、海外金価格を国内金価格に換算する際には注意が必要です。
1トロイオンスは、貴金属などの重さを計る際に使用される国際的な重量単位で、正確には1トロイオンス(troy ounce)= 31.1034768グラムです。省略記号として「toz」や「oz」が用いられます。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)のキロ・ゴールド先物取引では、1キログラム = 32.15トロイオンスと定められているため、この記事ではドル建ての海外金価格を国内金価格に換算する際にこれを用います。また、日本国内では、計量法により国際定義値の桁数を6桁に丸めた1トロイオンス = 31.1035グラムと定義されているため、円建金価格を海外金価格へ換算する際にはこれを用います。
2. 金価格の換算方法
2-1.ドル建てNY金価格を円建てに換算
NY金価格を基に、ドル円相場を掛け算することで、円建て金価格を算出します。例えば、ドル建て金価格が1トロイオンス2,657ドルのNY金価格と155円のドル円相場を用いると、1キログラムの円建て金価格は約13,240,495円となります。
日本ではグラム単位が主流のため、上記の式で計算された価格をグラム単位に変換します。1グラムの円建て金価格(税抜)は約13,240円となり、消費税10%を加えると1グラムの円建て金価格(税込)は14,564円となります。
ドル建てから円建てへの換算式
ドル建て金価格:1トロイオンス = 2,657.0ドル
ドル円相場:1ドル = 155円 のとき
ニューヨーク商品取引所での換算1キログラム = 32.15トロイオンス
1キログラムの円建て金価格(税抜)
= ドル建て金価格(ドル/トロオインス)×ドル円相場(円/ドル)×トロイオンスへの換算
= 2,657.0×155×32.15
= 13,240,495(円/キログラム)
日本ではグラム単位が主流のため、上記の式で計算された価格をグラム単位に変換します。
1グラムの円建て金価格(税抜)
≒ 13,240(円/グラム、端数切捨て)
国内での小売り価格は消費税10%を加えた価格であるため、最後に消費税額を加えます。
1グラムの円建て金価格(税込)
= 13,240+13,240 × 10%(消費税率)
= 14,564円/グラム(税込)
2-2.円建て国内金価格をドル建てに換算
国内金価格が14,564円/グラム(税込)の場合、まず税抜き価格を求めます。1グラムの円建て金価格(税抜)は14,564円÷1.1 = 13,240円/グラムとなります。日本国内では、計量法により国際定義値の桁数を6桁に丸めた1トロイオンス = 31.1035グラムと定義されているため、これを用いてドル建て金価格に換算します。ドル建て金価格(ドル/トロイオンス)は、税抜き円建金価格÷ドル円相場×トロイオンス単位への換算で、約2656.84ドルとなります。
円建てからドル建てへの換算式
国内金価格が14,564円/グラム(税込)の時、まず、税抜き価格を求めます。
1グラムの円建て金価格(税抜)
= 14,564÷1.1 = 13,240円/グラム
1トロイオンス = 31.1035グラムを用いてドル建て金価格に換算します。
ドル建て金価格(ドル/トロイオンス)
= 税抜き円建て金価格÷ドル円相場×トロイオンス単位への換算
= 13,240(円/g)÷155(円/ドル)×31.1035(g/トロイオンス)
≒ 2656.84(ドル/トロインス)
円建て金価格(税抜)= ドル建てNY金価格×ドル円相場×(32.15÷1000)
ドル建て金価格 = 1グラムの円建て金価格(税抜)÷ドル円相場×31.1035
以上のように計算し、国内金価格と海外金価格をお互いに換算することができます。
3. 国際商品としての金価格
3-1.ロコ・ロンドン市場の重要性
金は24時間変動する相場商品であるため、国内外の価格に一時的な差異が生じることもあります。しかし、市場取引を通じてこれらの差異は吸収され、同時刻の金の市場価格は概ね同じ価値を示します。
冒頭で触れたロコ・ロンドン市場は、LBMA(ロンドン地金市場協会、London Bullion Market Association)が定めた厳格な取引ルールの下で運営され、ロコ・ロンドン市場を通じて決定された金価格が、金の現物価格の世界的な指標となっています。
3-2.LBMAとグッドデリバリー・バー
LBMAは、イングランド銀行の監督下にある貴金属ディーラーが加盟する自主規制団体です。LBMAが定める取引ルールには、ロコ・ロンドン市場で扱われる地金の品質についても基準を定めています。LBMAが定める品質を満たした地金はグッドデリバリー・バー(Good Delivery Bars)と呼ばれ、世界の金地金の品質の基準となっています。
4.まとめ
金価格は、国際市場の動きや国内外の政治・経済状況に大きく影響されます。金価格を理解するためには、現物市場(ロコ・ロンドン市場)や為替相場、金利の変動を考慮することが重要です。また、国内外の価格を正確に把握することで、投資判断をより明確にすることができます。